楽しい 。 楽しい 。 楽しい 。 楽しい 。

 

 

だけど 、 

辛いよ。

  真っ白な 病室

  世界は半透明 。

  僕の未来は真っ黒 。

  色で例えると 、 こんな感じ 。

 

 

  いつも、 ね

  お見舞いに みんなが来てくれるんだ。

  その時は 、     楽しくて  面白くて 嬉しくて 幸せで 、

「 幸せ 、 だよな。 」って感じる 。

  段々大人っぽくなっていくみんなを見て 、

  時の流れを感じて 、

変わってくんだな・・ 。って思う 。

  みんな 幸せそうに笑って 、笑って 、笑って

  僕も 笑って 。 笑って 。 笑って 。

 

  それでも 、 それでも 。

  やっぱり 。

  辛いし 。 哀しいし 。 寂しいし 。 苦しい 。

 

 

  みんなから聞く 、 外の世界の話。

  廻る 廻る 。

  ころころころ 変わっていく 。

  変わらないのは 僕の病室の中 。

 

  みんなが居てくれる 、 病室 。

  がやがやがや 。 「 五月蠅いですよ 」って注意を受けるくらい

  賑やかで 、 五月蠅くて 。

 

  みんなが帰った後の病室は 。  からっぽ

  何の声もしない 。

  何の音もしない 。

ひとりぼっち

 

  そしたらやっぱり 。

  寂しくて 。

  みんなが来てくれると 、      嬉しいんだけど

                      だけど

 

                      あったものが消えるのがどれだけ辛いか 、       わかるかな

  一人で病室でいると 。

  いつもこんなことばっかり 。

  嫌な人間だよな 。 僕  、

  みんなは全然悪くないのにさ 。

 

  嫌な人間だよな 。 僕 。

  自己嫌悪する 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  今 、 16歳 。

  20歳まで生きられたら 、 充分でしょう 、だって 。

  笑えるね 。

  あと 4年か・・・ 。

  昔は 、          医療技術発達しないかな 、  とか

                 新しい特効薬できないかな 、  とか

                 何の病気でも治す薬がある 、  とか

  阿呆らしい考えを持ってた 。

  でもさ、 医療は変わらない 特効薬できない そんな都合のいい薬無い 。

  現実がね のしかかる 。

  現実って 厳しいね

 

 

 

  僕のお気に入りの場所 。

  屋上 。 多分 誰だってお気に入りになると思う 。

  あんな狭い箱の中に居たら 。

 

 

 

『 空が 飛びたいね 。 』

  僕もだよ・・・・・・って

  今の、 誰?

『 ねぇ 、 人の話聞いてる? 』

  ・・・・・

  ふんわり短い薄茶色の毛に 、 真っ黒な目 。

  初めて見る顔 。

  新しく入院してきた子かな?

『 無視するなー 。寂しいじゃんかー 』

「 ・・・どちらさんですか? 」

『 あ、 そうだよね 。 自己紹介が未だだね 。

えっと、新しく306号室に入院することになった 、

太田 葵 。

よろしくねー 

  そう言って 、

  君はにっこり微笑んだ 。

「 僕は201号室の 、 時雨 さな

よろしくな 」

  葵は今まで 病院を転々としていたらしい 、

  どの病院でも入院と退院の繰り返し 。

  そこでこの病院に来たらしい 。

  お医者さんに勧められたとか 。

 

  僕達は こうして出逢った 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  くだらないことばっかり 話した 。

  あの看護婦さんは優しいだとか 、

  火曜日の病院食は美味しくないとか 、

  お父さんが禿げてるとか 、

  勉強がもうさっぱりわからないとか 、

 

  もう3年も学校へ通ってないとか 、

  あとどれくらいで治るんだろうとか 、

  お見舞いに来る回数が 年々減ってるとか 、

もう長く生きられないんだよねとか 、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  僕達はすごく 、 短い一生を終えようとしているところまで来てるんだって 。

  葵は言ってた 。

  確かに 、 そうかもしれないね 。

  でもね 、 終えようとしているこの時に

  葵と出逢えて

僕は良かったと思ってるよ 。

  人間には誰でも 終わりが来る 。

  それが 早いか 遅いか 、

  ただそれだけのこと 。

「 初めて会ったとき 、

空が飛びたいって言ったよな ? 」

 

『 うん 』

 

「 何で ? 」

 

『 特に理由があるわけじゃないけど 、

空って 、 飛べたら

気持ちいいだろーねーって思って 。

 

それだけ 。』

 

「 ふーん 

、 じゃあさ 。

僕達の 、どっちかが 、 生きるのを止めたくなった時 。

空を飛ぼう? 」

 

  僕の突拍子もない考えに葵は笑った 。

  生きるのを止めたくなった時って・・・

  そんなの 、 さなと居るのに思うわけ無いじゃんって。

『 でもさ 、  いいね  それ 』

 

  僕達は 、 この日 。

  約束した 。

( 死ぬときは 2人で空を飛んで ) だね 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  楽しい 、 楽しい 、 楽しい 、 楽しい 。

  みんなが お見舞いに来てくれて

  喋って 喋って 喋って 。

  「 五月蠅いですよ 」 って先生に怒られて 、

  でもまた喋って 。

  みんなが帰って 、

  病室は静かになって 、

  ちょっと寂しくなって 。

  でも 、

  僕は1人じゃないから 。

 

  葵と屋上へ行って 、

  喋って 。 喋って 。 喋って 。

『 辛くないよ 。 全然

なんだかね 。

今までで1番楽しい気がするの 』

  葵がそう言って

「 僕も 、 今までで1番楽しいよ 。

長生きできなくてもいいって 、最近思うようになった 。

一生分の思い出を もう 作り終えた感じなんだ 」

  僕がこう言う 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  空は青くて 。 雲は白くて 。 太陽は赤くて 。 

  僕の病室は白くて 、 葵の病室も白くて 。

  でも 屋上は カラフルで 。

  そんな そんな 毎日を 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  人間って 、 嫌な生き物 。

  楽しいことや 嬉しい事 そんなことが毎日続くと 、

  段々我侭になっていくんだね 。

 

 

 

 

  この頃から 、

  世界が荒んで見えた 。                                    くだらない大人に くだらないニュース 。 くだらない現実 。 

  病室が鳥かごに見えた 。                                  翼の無い鳥たちを無理矢理籠に押し込めたよう

  現実がつまらなくなった 。                                     生きる意味がない 薬を使ってまで生きる必要は? どうせ 死ぬし。

  病院食が不味く感じてきた 。                                味が薄い こんなの食べてても治らない ラーメンが食いたい 。

  終わりの見えたマラソンを 止めたくなった 。

  2人とも 。

 

  あの頃は 、 生きるのを止めたくなるなんて 考えもしなかった 。

  2人でいるだけで良かった 。

  みんなが月に1回 半年に1回 お見舞いに来てくれるだけでよかった 。

  世界はカラフルで 。

  僕達は 、 生きようとしていた 。

  半透明な世界から 、 カラフルな世界へと 。

 

  でも 。

  なんだか 。 楽しいんだけど 。

 

 

  それでもどこか 。 辛いんだよ 哀しいんだよ 苦しいんだよ 痛いんだよ

  薬の副作用かな?

 

  心臓の近くが痛いんだよ 。

 

 

 

 

  もうさ 、 飛んでもいい頃じゃない?

  なんて 思ったとき 。

  2人で 屋上へ行って 。

  喋って 喋って 喋って 。

  大声で

『 さなと出逢えてよかった 。

楽しかった

嬉しかった

でももう。

飛びたいな 』

  だから僕も大声で

「 僕も 、 葵のおかげで 辛いって感じることも

哀しいって感じることも

すっごく減ったよ 。

それくらい楽しかった 。

だけど 。 

くだらない世界

真っ黒な現実

そこから抜け出したい 。

飛ぶか! 」

 

 

 

 

 

(  あの日の 約束 だからね )

どっちかが生きるのを止めたくなったとき 、 2人で 飛ぼう 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  僕達は 、 約束を実行した 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  (よく解る解説。

  さなは10歳の時に病に罹る

  最初 、 25歳くらいまでなら生きれるでしょう と言われ

  そのままの生活を送る。

  だが、13歳の時、異変を感じる 。

  さなの病の進行が早まる。

  入院して安静な生活を送って20歳まで生きられるか。

  親は少しでも長生きしてもらおうと入院させる。

  当初は毎日お見舞いにきたが

  さなが入院費を払う大変さをわかった頃。 そんなに頻繁に来なくていいよという

  みんな とは 10歳の頃の同級生 。

  馬鹿なことやったり 阿呆なことやったりしてた仲間。

  葵は15歳の時に交通事故。

  大きな手術をしたが大きな爆弾を抱えた。(脳の血管が細くなり詰まってしまうみたいな)

  16歳になったときにさなと出逢う。

  出逢った当初は本気で空を飛ぶつもりだった。

  つまらない入退院に厭きてきたときにさなと出会い また生きようと思った。

  2人とも 性格が歪んでいたわけでも捻くれていたわけでもない

  ただ先の見えたマラソンを途中で棄権したくなっただけ。

  そう、 それだけのこと)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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